ゾンビ映画で主人公がTシャツ着てるのが納得いかない

だって噛まれたらゾンビになるんですよ。プロテクトしろよやる気あんのか

「風立ちぬ」を見てきました

(7/21に大幅に追記しました。)

 

 

【絶賛の嵐】ジブリ「風立ちぬ」試写会後のクリエイター・業界人感想まとめ

 

こちらのまとめを読んで、風立ちぬを見たくて見たくて上映が始まるのを今か今かと心待ちにしていました。

なにしろアニメ業界の名だたる監督が大絶賛の嵐ですから。

 

そして上映開始の今日、早速観て参りました。

 


風立ちぬ 劇場予告編4分 - YouTube

 

感想としては、ですが・・・うーん・・難しい。

作品が作品なだけにうかつな事は言えないという事もありますが、正直、今少し混乱しています。

 

今の心境に正直に言えば、満足度は50点という感じでした。

つまらないと言う事はありません。二時間全く飽きませんでした。大盛り上がりのない静かな作品でありながら、時間が全然気になりませんでした。

 

 

まず、一番懸念していた庵野秀明の演技ですが、下手です。

20年以上アニメの監督をして、何十人もの演技にダメだしをして来た人間でも、この演技か・・・と思いたくなるような棒読みでした。

※上に張り付けてあるYoutubeの動画を観ていただければ良くわかると思います。

 

ただ、彼の演技に対しても非常に複雑に感じている部分があり、明らかに周りの芸能人の演技と比較しても突出して下手くそなんですが、やっぱり慣れるんです。慣れてしまうんです。だんだん、「こういう人なんだな・・」と受け入れてしまう自分がいて、それが心底癪なんです。

だって最初はヘタすぎて不快にさえなった演技なので、慣れたりなんかしたくないんです。

さらに言えば、トトロの糸井重里の演技からずっと、ジブリの棒読みを聞かされ続けてきて、ジブリの棒読みに対して耐性がついてしまっているんです。それが自分でわかるんです。それがまた癪なんですよ。

少なくとも、観ているうちに主人公の声が庵野秀明である事を忘れる事は最後までありませんでした。慣れはするものの、ずっと気にはなっていました。 

 

 

僕には以前の仕事の関係で声優という仕事をしている知り合いや、声優を目指して頑張っている、いわゆる声優の卵という知り合いが何人かいます。

彼らの「声で演じる」という事に対する真剣な姿勢や、声優という仕事に対する情熱、強い想い、そういうものを知っています。

わざとらしい演技が嫌なのであれば、もっと朴訥な演技を要求すれば声優というプロフェッショナルはそれに応えてくれると思います。

 

なので、やはり今作の庵野氏の起用は全く理解できないし、実際に観て断言しますが、彼が主人公を演じるに最も適していた人間だとは思えません。

庵野氏個人に対しては依頼を受けただけでしょうし、何も思う所はありませんが、宮崎監督のキャスティングは明らかに暴走だと思います。

 

ただ、主人公二郎のイメージに一番近い知り合いだから連れて来ただけちゃうんか、と。

庵野という人物を知っている人間からしたらベストマッチかもしれませんが、会った事もない人間にしてみたらただの棒読みのオッサンですよ。

 

 

そして映画の内容に関してですが、これもまた複雑で、宮崎駿という老人が、ここに来てやりたい放題やりまくった、そういう映画だと感じました。

その姿勢には素直に感服です。清々しくて好感が持てます。

ただ、映画としての作りがかなり雑です。僕には雑だと思えました。

 

やりたい事以外には気をまわしたくないのかな、と思ってしまいました。

そういう部分は、プロなんだからそこはちゃんとしろよ、という反感を覚えたりもするんです。

 

雑という部分で最も気になったのは、シーンの切り替えが酷く分かりにくい。

まったく突然にシーンが切り替わり、何の説明もなく数年経っていたりする。

本作はしばしば主人公の夢の世界が描かれるのでかなり混乱しました。

観ていればわかる事ではあるのですが、すぐに飲み込めないため「あれ?うーんと、あ、そう言う事か」というような感じで理解する事に思考が奪われます。これが煩わしくて集中を削がれました。 

 

シーンが切り替わって数年が経過するのであれば、一旦風景を挿入したり、明らかに時間が経過したとわかる意味のある何かを見せたり、何ならテロップで西暦を出しても何の問題もないと思いますが、そういう演出は必要なのではと思います。

主人公の二郎も全く外見が変わらない。声もずっと棒読みの庵野であると、これはとても混乱します。ヒロインの菜穂子は外見が成長しているので、なぜ二郎にはそれをしなかったのかと。

 

本編中、とにかく二郎の夢の中が頻繁に描かれます。

この夢のシーンは楽しく、二郎の飛行機への情熱を描く重要なシーンなのですが、それとは別に二郎が過去を回想するシーン、設計していてふと想像上で飛行機を飛ばすシーンとが差し込まれるので、今のは過去を思い出しているのか?それとも空想か?夢のシーンか?そこらへんがすぐに頭に入ってこない。

これも煩わしいです。観ていて本筋がつかめなくなるほど混乱する事はないのですが、宮崎監督が手を抜いている、と感じてしまってやはり気が削がれます。

 

そういうシーンを入れるのであれば、一度でいいので菜穂子に再開する前のシーンで二郎が菜穂子を思い出すシーンを入れて欲しかった。

僕は再開が描かれるまでヒロインが菜穂子かおキヌかどちらなのか判然としないまま観ていました。これは、二郎が不在のうちに届け物をしにきた女性がいた、と聞いて二郎がハッと思い浮かべるのがおキヌだったからです。

二郎が菜穂子と再開するまでの間、彼女をどのように思っていたのか、忘れていたのか、二度と会えないと思っていながらも忘れる事ができなかったのか、その辺りが描かれないので(家を訪ねたら焼け跡だった、という下りはあるので最低限の説明はされているのですが)、初対面からずっと恋をしていた、と唐突に言われても「お前ずっと飛行機の事しか考えてなかったやんけ」と思ってしまいます。

わずか5、6秒でいい。ふとした瞬間に菜穂子を思い出すシーンを入れたら、そこの部分がグッとリアリティを増したのになあ、と思うのです。

 

他には二郎の上司である黒川氏の夫人を、菜穂子と二郎の妹である加代が「姉さん」と呼ぶのですが、これも僅かながら混乱しました。これは黒川夫人と二人が仲良くなり、慕って「姉さん」と呼ぶのだと思うのですが、これは仮に史実に基づいたのだとしても何の説明もなくやって欲しくはなかった。

 

やるのであれば、もっと黒川夫人のキャラクターデザインをそうと分かるほど個性的なものにして欲しかったです。

何しろ、黒川邸に居候していた菜穂子と彼女を訪ねてきた加代が唐突に黒川夫人を「姉さん」と呼ぶと、あれ?ここは黒川邸ではなかったか?いつの間にか二郎の実家に居を移動していたのだろうか。菜穂子は「姉さん」ではなく「義姉さん」と呼んだのだろうか?

と混乱します。今まで二郎の姉など登場していないのですが、それまでの雑な作りがあるので、これもちゃんと描かれていないだけなのかと頭をまわしてしまう。

 

クライマックスのシーンに集中を削がれるのはとても損をしている気持ちになります。

 

 

また、これは好き嫌いの話になるのかもしれませんが、ジブリ特有の躍動感ある演出が僅かではありますが邪魔に感じました。

鞄の荷物に手を入れると荷物全体がブワっと膨らんだり、飛行機や列車が動くと部品一つ一つが生き物のように躍動したり、光沢のある着色も相まって有機物かのような描かれ方をしていました。

せっかく夢のシーンがふんだんに描かれているのだから、そういう演出は夢の中だけでやって、現実の描写はもう少し無機物らしく描いて欲しいと思いました。

リアリティが薄まってファンタジーに近づいていくような、そんな演出に感じました。

 

ファンタジーと言えば、機械や自身のSEが(多分)人の声を使っているんです。

これは意味が分からなかった。個人的には非常に「余計な事」に感じました。

機械の音ではいけなかったのか。夢の世界だけならともかく、なぜ現実を描いているシーンで、現実の音とは異なる音を機械に出させたのか?気になりました。

 

 

と、ここまでひたすらに文句ばかり並べてしまったのですが、これは風立ちぬという作品そのものは素直にとてもいいアニメで、だからこそ没頭させて欲しかった、集中がしばしば削がれて残念だった、という事です。

映画の内容、メッセージ、二郎の飛行機に賭ける想い、その気持ちにも負けない愛、そういう部分はとても良かったと思います。

 

この日記の冒頭でリンクを貼った業界人の絶賛の声というのは、二郎の飛行機に対する情熱、モノ作りに対する情熱に対する感動ではないでしょうか。

そして、今それを描く宮崎監督その人に対する感動、宮崎監督が自身のモノ作りに対する情熱を描いた、その事実に対する絶賛ではないでしょうか。

 

主人公の二郎という人間は、全く完璧な人間ではありません。

彼は飛行機を作る事に魂を奪われてしまう。彼は自分の作る飛行機が戦争で人を殺すと分かっています。分かっていて設計する。

子供の頃にいじめを止めに入ったり、大人になってからも見ず知らずの子供にお菓子を分け与えようとしたりと、正義感の強い人間であるという風に描かれます。

しかし、戦争に使われる飛行機作りには全く疑問を持ったりはしない。軍隊が邪魔だなあ、と考えていても、軍の要求に応える性能の飛行機を寝食削って作ろうとします。

愛する妻との暮らしも犠牲にします。(このあたりは時代もあるのでしょうけど)

肺結核で死を待つ妻のそばで煙草も吸います。

声は庵野です。 

 

全く完璧ではない。描き方によっては相当問題のある人物として描く事も可能です。

しかし、宮崎監督は彼の飛行機に対する情熱に心を奪われたのでしょう。そして恐らく自身も投影し、それを描く事を決めたのでしょう。

これは宮崎監督が純粋にやりたかった事、言いたかった事で、サービスしようとかなるべく大勢が楽しめるように、とかそういう気持ちはこれっぽっちもないと思われます。

なので考えるのが面倒くさい演出面の細かい部分はおざなりになったのではないでしょうか。

そうなると、後は宮崎監督のこの直接的すぎるメッセージにどれだけ共感できるか、感動できるかという話になってくると思います。

 

なので、この作品をどのように評価していいのか混乱しているのです。

僕は「言いたい 事はわかるし、いい事を言っていると思うけど、言い方が雑で気になって伝わりづらかったよ」という感じでした。

 

そこが残念であり、同時にここまで「自分」をむき出しにしてきた宮崎監督に対して素直に感動しています。

正直、千と千尋の神隠しも、ハウルの動く城も、崖の上のポニョも、いまいち意味が分からなかった。観ていて飽きないけれど、なにがなんだか分からなかった。

 

それが、ここまでテーマをストレートに持って来られると、久しぶりに宮崎作品を観た気さえして、その事に関しても嬉しかったです。

 

とりあえずは賛否が別れる映画なのでは、と思いました。

一緒に観た友人は絶賛していました。なので、観てみたいという気持ちがあるなら、まず観てみることをオススメします。

 

色々映画のレビューサイトを呼んでみると、僕のように批判的な意見の人はごく少数派で、絶賛している人がとても多いですね・・・

どうやら僕は少数派の、「細かい部分に難癖をつける」部類のようです。

なんか悲しいな・・僕も素直に感動できれば良かった。

 

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