リアル・スティールでハリウッドの様式美に興奮して感動した★★★★★
いやー、パシフィック・リムでロボット成分が欲しくなったんですかね。
リアル・スティールをレンタルしてしまいました。
この作品、上映中は全く興味を感じなかったんですよね。ロボット好きなはずなんですけど、「ロボットがボクシングてw」みたいな、なんというかスケールが小さい感というか。
映画館で見るほどの事はなくね?などと思ってしまいまして。
でも、よくある「面白い映画を語るスレ」みたいな感じのまとめサイト、ちょいちょいはてブでホッテントリ入りしたりするじゃないですか。月イチくらいで。
そこでリアル・ステイールの名前を良く見かけていたんですよね。
あれ・・?完全にノーマークだったけど、リアル・スティールまさかの名作なのか?
と思って借りてみたわけなんですが。
誠に申し訳ございませんでした。これは面白い。大変面白かったです。
ストーリーは
人間の代わりに高性能のロボットたちが死闘を繰り広げるロボット格闘技の時代―。夢も希望も失くした元ボクサーのチャーリー(ヒュー・ジャックマン)の前に突然、母を亡くした11歳の息子マックス(ダコタ・ゴヨ)が現れる。険悪な雰囲気の父と子は、マックスが廃品置き場でみつけた旧式ロボット“ATOM”との出会いをきっかけに、少しずつ絆を取り戻していく。熱心なマックスに心を動かされ、チャーリーはATOMに自分の技を教え込む。やがてATOMと共にどん底から這い上がった2人は、史上最強の王者ロボット、ゼウスとの対戦へ―。
製作総指揮S・スピルバーグ×R・ゼメキス、アカデミー賞(R)視覚効果賞にノミネートされた迫力のロボット格闘技シーンと親子の絆が魂を揺さぶる、感動のアクション大作。
こんな感じです。
ていうかスピルバーグとロバート・ゼメキスが関わっていたのか・・知りませんでした。
スピルバーグの名前を目にするとなるほど、という感じではありますが、本作はCGとは思えない見事な技術で描かれたロボットが闘う最先端の技術で作られた映画でありながら、ストーリーはハリウッドの基本に忠実な「古き良き」感動作であります。
(以下、若干ネタバレあり)
ヒュー・ジャックマン演じる主人公のチャーリーですが、上で引用しているあらすじでは「夢も希望も失くした元ボクサーのチャーリー」となっています。
ですが実際はロクデナシなんですね。借金だらけで、堅実な稼ぎより一発勝負を好んでしまうギャンブラー気質。
しかも逃げグセがあるんですね。とはいえ、根っからのクズではなく、常にそういう自分に対する葛藤が燻っている。そんな人物です。
そんな彼の元に、はるか昔に離婚した妻の訃報が届くわけですが、二人の間にはマックスという息子がいたのですね。
チャーリーはマックスの存在は知っていたのですが、10年以上会いに行く事もせず、全く興味無しで生きていました。しかし、目先の大金に釣られて、というより大金をせしめるための取引材料として一か月間マックスを預かる事になるわけです。
小物臭にじみ出るクズですね。
で、マックスと一緒にロボットボクシングのリアル・スティールを通じて心を通わせる、というハートウォーミングストーリーであります。
とりあえずこのマックス少年がトリンドルに凄く良く似た可愛らしい少年でありまして、ヒュー・ジャックマンもこんなクズいねえよ!っていうくらいのハンサム・ガイなわけですけれども、ここらへんはもうちょっと悲壮感ある感じのキャスティングでも良かったかもしれないですね。ニコラス・ケイジとかいい仕事しそう。
とにかく、このダメ親父と親父に懐かない息子の交流という構図は、もはやハリウッドの様式美とでもいいましょうか。多分今まで50本以上は作られていると思われます。
でも、それがいいんですよね。様式美ならではの安心感。
しかし、それが最先端CGで描かれるロボットと見事にブレンドされていて、古臭さもなく、しかし良い部分はキッチリ感動できて、とても見事な映画として仕上がっているのであります。
元ボクサーの父親が最後には息子の前で誇りを取り戻し、再起するという構図ですと、ボクシングを初めて勝たなくてはいけません。でも、それをやると途端に不自然というか、ご都合主義な展開になってしまうと思うのですが、ロボット・ボクシングにする事で、その部分が違和感なく、むしろクライマックスの興奮に繋がるんですねー。見事です。
公式サイトには「興奮VS感動どちらが勝つか!」とありますが、僕としては興奮の方が勝ちました。
ボクシングも、ロボットとはいえ本格的に描かれていて、ヒュー・ジャックマンのシャドーも堂に入っていて見事です。調べてみたらシュガー・レイ・レナードに指導を受けたとか(!)そりゃ見事なわけですね。
話は変わりますが、本作、パシフィック・リムほどではないですが、ちょいちょい日本に対するリスペクト演出があります。
たとえば、主役親子が操るロボットの名前は「ATOM」。これは間違いないでしょう。
ATOMの前に使用しているロボットの名前はノイズィ・ボーイというんですが、これが日本で作られたロボットで、体中に漢字のペイントが施されております。
胸には大きく「超悪男子」の文字が。超悪男子ってなんやねんww
ノイズィ・ボーイにはスズキ製のパーツが使われているし、マックスは日本のゲームが大好きで、それで覚えた日本語を使うのです。
こういう演出にはニヤッとしてしまいますね。
あとはLOSTのケイトを演じていたエヴァンジェリン・リリーがヒロインのベイリーを演じていたり、なんか他にももう一人LOSTに出てた目力の強いオッサンが本作にも出てて悪い奴を演じていたりして、個人的に嬉しかったですね。
この悪い奴が最後がキッチリ片付けられるあたりも実に古き良きハリウッド映画である一方で、ラストの試合の結末もご都合主義すぎず、それでいて不満も感じない、いい片づけ方だったと思います。
重要なのは試合そのものよりも、チャーリーの本当の意味での再起であり、親子の絆の復活であり、そこらへんは非常にキッチリ丁寧に描かれていたのがとても好印象でした。
それでいて押しつけがましいわけでもないですし、その辺りの匙加減がとても上手な監督ですね。
この監督の作品は調べてみると他には「ベガスの恋に勝つルール」くらいしか見た事がないのですが、これもドタバタラブコメなんですがとても安定した作りになっていて良作でしたね。丁寧な映画を作る監督のようです。
この監督の最新作はヴィンス・ボーンとオーウェン・ウィルソン主演で、勤め先を失った中年二人がGoogleでインターンするという内容のコメディ映画のようです。
この映画も面白そうですねー。日本では上映はないのでしょうか。
まあそんなこんなで、リアル・スティールはネットの評判に違わぬ良作でしたよ。
安心して映画を楽しみたい気分の方にはお勧めです。