オブリビオンを観てきたので、感想 ★★★★☆
トム・クルーズ主演のオブリビオンが5月31日から上映されております。
僕はトム・クルーズ大好きなんですよ。
なので、トム・クルーズ主演というだけで殆どの出演作を観に行ってしまいます。
実際、彼の主演作でそこまで酷い作品に当たる事もあまりないですし。
なんかザ・ハリウッドっていう感じがしますよね。
オブリビオンも、そんな感じでどんな映画なのかよく知らないままに
「トム・クルーズが主演で地球上から人類がいなくなった世界の映画」くらいの情報で観に行きました。
いや、これかなり面白いですよ!
ドンデン返しに次ぐドンデン返しで、見ていて何度も「おおっ?!」ってなります。
個人的はミッション・インポッシブル ゴースト・プロトコルよりずっと面白かったです。(こっちも良かったですが、もっと、という意味です)
2077年、エイリアンの攻撃を受け、地球は全壊。
生き残った人類は、他の惑星への移住を果たすが、ジャック(トム・クルーズ)は荒廃した地球に残り、パトロール機バブルシップをかり、高度1,000mの上空から地球を監視している。
ある日、ジャックは墜落した宇宙船で眠る美女ジュリア(オルガ・キュリレンコ)を発見する。目を覚ました彼女は、なぜか逢ったことのないジャックの名を口にした。
彼女に不思議な結びつきを感じながら、次第にあらゆる現実に疑問を抱くようになっていくジャック。そして、二人に隠された”真実”は謎の男ビーチ(モーガン・フリーマン)によって明かされようとしていた―。
人類のいない地球に残されたジャックと、突如現れたジュリアの織り成す切ないラブストーリーが誕生した。
これが公式サイトのストーリーですが、結構テキトーだなー・・・
書いてある事、半分くらいしか合ってないような。
※っていうかこの公式サイト全コンテンツ1ページ内にあるのか・・すげーな
とりあえず、SFとしての完成度や伏線の回収、ドンデン返しの質など、かなり上質の脚本だと思います。
とはいえ反面、脚本という意味では要所要所でご都合主義の展開も結構多く、そこらへんはハリウッド作品の大雑把さとして許容できないと見ていて気になるかもしれませんね・・・。
見どころはそれだけではなくて、人類の影が消え去った地球の風景、自然や過去の建造物(攻撃されてごっそり抉られたペンタゴンとか)の描き方など、それだけでわくわくします。
また、監督がトロン・レガシーのジョセフ・コシンスキーだけあって、衣装や小道具、マシンのデザインが滅茶苦茶洗練されています。
これを見ているだけでこの映画を楽しめますよ。シンプルなのに飽きない。すごいなー
しかし、脚本も設定もとても見事だったのですが、トム・クルーズが今撮影している「All You Need Is Kill」と結構被ってるんですよね。
原作通りのストーリーだとしたらの話ですけど。
主演が他の俳優だったらともかく、同じトム・クルーズだとすると、これは大丈夫なのか・・?と心配になるレベルで被っているような。
よくある設定といってしまえばそれまでなんですかね。
以下、ネタバレします。
少しでも見ようかな、と思っている人は、是非ここから先は読まずに作品を見てください!!
何度も書いてしまいますが、オブリビオンが面白かった!と思った一番の理由としてはやっぱりその設定の見事さですよね。
ジャックとヴィカの二人はタイタンへと移住する人類のために海水を集めるプラントの警備をしているわけです。
海水がないうちはタイタンには人類は住めないので、人類はその間、衛星軌道上にあるテット(テトラパックの形をしているので、4の意味のtetraからとったんでしょうか?)と呼ばれる宇宙ステーションに住んでいます。
なぜ人類は地球に住まないかというと、以前に地球は宇宙人から侵略を受け、それを退けるために核を使用したからです。
地球は汚染され、ごく一部を除いて人が住める環境ではなくなってしまったのですね。
戦争には勝ったが、人類は結局地球を失ってしまった。
(追記:ここらへんは映画開始時にトム・クルーズのナレーションで語られるのでちょっと記憶が曖昧なのですが、まず宇宙人が月を破壊し、そのせいで地震と津波が人類を襲い、人類の大半が死滅したと言っていました。
その後、人類が核を使ったと言っていたように記憶してます。)
そして地上にまだ残っている宇宙人「スカブ」による攻撃からプラントを守るのがジャックの使命というわけです。
映画の開始時点で、警備の仕事は残す所あと2週間となり、任期が過ぎればテットに帰れるという状態。
ジャックとヴィカは機密保持のために5年前以前の記憶を消去されているのですが、ジャックは何度もある女性の夢を見ます。
ジャックは「会ったはずがない」と言います。
これは、夢の中の光景が戦争以前の光景だからでしょう。
そんなある日、戦争以前の宇宙船が地上に潜むスカブの信号に誘導され、墜落してきます。
テットからの命令に背き、墜落現場に急行するジャック。
そこで冷凍睡眠する女性を発見します。その女性こそ、何度も夢に見た女性ジュリアだった・・・という感じなんですが。
なんと、すでにこの説明の半分くらいが「実はウソ」です。
これが順に紐解かれていく展開は見ていて驚きの連続であり、どんどん引き込まれていきます。
真相は実は、テットは地球に突如現れた「侵略マシーン」だったのです。
これが、「誰が何のために作ったのか」などという説明は最後まで語られません。
これを消化不良と感じるかどうかは人によると思うのですが、僕は気になりませんでした。
そこかの誰かが作り、もしかしたら作った種族さえとっくの昔に絶滅しているかもしれない。
そんな「明確な意思を持たないマシーンによる不条理な侵略」こそが、人類を窮地に追いやったものの正体だったのです。
最後、テットは「別に人類を絶滅させる必要はない」とまで言います。
じゃあ結局何がしたかったのか?
つまりは、目的も不明瞭である、理屈の通じない機会が敵だった、という事でしょうか?
そして、テットによって教えられた宇宙人の生き残り「スカブ」こそが、地球に残り抵抗を続ける人類だったのです。
ジャックはテットにウソを信じ込まされるまま、ずっと同胞を殺戮する手伝いをし続けていたのです。
となると、タイタンの移住に必要な海水の回収プラントは何だったのか?
人類を絶滅させるために地球から海水を枯渇させるための装置でした。
ジャックが守り続けていたものは、人類絶滅装置です。
放射能に汚染され、近づくだけで命を落とすとされる危険区域は、全く危険ではありませんでした。
なぜそこに近づいてはいけないのか?
なぜなら、そこには他のジャックとヴィカがおり、彼らが守るエリアだったからです。
つまり、ジャックはテットによって複製されたコピー人間だったのです。
字幕で「複製(クローン)」となっていましたが、複製前の記憶を持っている事を考えるとクローンではないと思われます。
テットの超科学で存在をそのままコピーされたという事でしょう。
地球は無数の「ジャックとヴィカ」によって管理されていた。
そしてお互いの存在に気付かないように、お互いの管理区域を「近づくだけで死にいたる危険地帯」として認識させられていたのでしょう。
ジュリアは、複製前のジャックの妻でした。
ジャックはその記憶をずっと持ち続けていたんですね。
記憶を消されても、妻への想いだけは残っていた。
ちなみに、オブリビオンとは忘却という意味だそうです。
テットに乗り込むシーンのフラッシュバックで、複製前のヴィカも、ジャックに恋をしていたであろう事が描写されます。
ヴィカのジャックへの想いは、作られたものだったわけではなく、彼女の心の底からのものだったのでしょう。
なので、テットの命令に背き、「作られた真実」が壊れることを何より嫌ったのかもしれません。
しかし、恐らくテットの言うまま2週間後の人気を終えても、処分されて新しい二人が派遣されるか、また記憶を消されていたんでしょうね。
このあたりの次々と真実が解き明かされる流れは非常に興奮しました。
こういうドンデン返しは大好物です。
ただ、一方で脚本が荒いというかご都合主義だと感じる部分も結構ありましたね。
モーガン・フリーマン演じるビーチだけがドローンの攻撃を受けていても「瀕死」で生きていたのか。
他の人は一瞬で消し炭でしたからね。チェインバーかよっていうレベルですよ。
せめて、倒れて来た柱にやられたとか、そういう直接ドローンの攻撃を受けたわけではない描写は欲しかったかなあ、と。
後は普通の人は瞬殺するドローンが、ジュリア達にだけはサーチをかけて一瞬攻撃の手を緩めたこと。
緊迫感の演出としては古すぎますし、せめて柱の陰に隠れているのをサーチするとかそういう配慮が欲しかったですね。
目の前におるがな!って突っ込んじゃいましたからね・・
一番疑問だったのは、なんでジャックはテットにすんなり入れたのか?っていう事ですね。
あの時点でまだテットは見方として認識していたのでしょうか?ヴィカは瞬殺したのに・・・
テットは爆破前に「人類を絶滅させなくてもいい」と言っていましたし、何らかの対話の用意があったのかもしれませんね。
もしくは、まさか自爆するとは思っていなかったとか。
ラストシーンで「52番」が現れるシーンは、救いのあるハッピーエンドと取るか、「おいおい」となるかも人それぞれでしょうね。
僕としては49番に感情移入している手前おいおい、と思いましたが、「新しい出会い」に過ぎない、という見方もできますしね。
ただ、52番のヴィカは可哀そうですね・・・
しかし、これらの設定を踏まえて考えると、シンプルで洗練されていたように感じたジャック達の衣装やタワーの家具や装丁も、全てがテットという機械によって量産された「パーツ」としてのデザインに感じてしまうのが不思議というか、見事ですよね。
166番のドローンに仕込んだガムは何かの伏線かと思ったら全く関係なかった・・・笑
オブリビオンはSFとしての設定と脚本のドンデン返しこそが魅力の作品だと思います。
ですが、漠然とした違和感を抱えて生きるジャックの覚醒のストーリーでもあります。
記憶を消去され、「部品」として製造されたジャックは、記憶と自我を取り戻しますが、直後、自分はただの複製だと知ります。
しかし、ジュリアと触れ合い、「オアシス」で時を過ごす事で、自分はジャックであると改めて認識しなおすわけです。
そして自分の使命としてビーチ達に合流し、最後は産みの親であるテットを「ジャック」として破壊するに至る。
ラストシーンでは、ジュリアとの間に子供を授かっていた事も明かされる。
覚醒とも言えますし、成長とも言えるでしょう。
(そういう意味でも52番は・・どうなんだろう?)
いやー、それにしてもトム・クルーズ若い!
アップだと歳食ってるんだけどなんというか「若いっぽい」!
いつまでこの路線で頑張るんですかねー・・
アウトローでは無理なラブシーンなどは入れず、非常に安心して見れたわけですが、今回はSFという要素があまり違和感を感じさせなかったような。
トム・クルーズには変な衰え方をせず、自然に路線変更してスター性を失わないまま活躍し続けてほしいですね。
※All You Need Is Killの原作、1冊なので読みやすいです。
重厚なストーリーと予想外の結末はハリウッド化も納得のレベルです。
たかがラノベと言わず、是非!